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遺言書の作成

写真:遺言書作成イメージ

遺言書とは、被相続人(死亡した方)が自分の死後に自分の財産を誰に対し、どのように分配するかなどを記載したものです。
遺言書の様式は定められていませんが、書き方については、法律上「法律の定める方式に従わなければ、効力を発揮しない」と明記されています。(民法960条)そのため、法令で決められた範囲内で書かれた遺言書でないと効力がありません。

遺言書には、上記の「法定遺言事項」の他に、法的効力はありませんが家族へのメッセージや、葬儀、納骨に関する希望などを記載した「付言事項」があります。

遺言書の作成が必要な場合

以下のいずれかに当てはまるケースは、遺言書の作成をお勧めします。

  1. 分割しにくい土地がある場合
    主な財産が自宅の土地・建物のケース。財産をどの様に相続させたいのか明確にしたい場合は、遺言書を残しておく必要があります。
  2. 事業を承継させたい人がいる場合
    個人で事業を経営している場合、経営の基盤となる財産を複数の相続人に分割してしまうと、経営の継続が困難になります。特定の相続人に家業を承継させたい場合は、遺言書を残しておく必要があります。
  3. 相続人毎に相続させる財産を指定したい場合
    遺言者が特に世話になっている子に多く相続させたい、孫に遺贈したい、身体障害のある子に多く相続させたい等、相続人に応じて、遺産相続させたい場合には、遺言書を残しておく必要があります。
  4. 夫婦間に子供がいない場合
    夫婦間に子供がなく、かつ夫の直系尊属(父母や祖父母)もない場合は、法定相続になります。夫の財産は、妻が4分の3、夫の兄弟(代襲相続人の場合は甥姪)が4分の1の各割合で相続することになります。法定相続に依らない場合は、遺言書を残しておく必要があります。
  5. 相続人がいない場合
    相続人がいない場合は、特別な事由が無ければ遺産は国庫に帰属します。
    お世話になった人などに遺産を譲ったり、社会のために役立てるための寄付を行う場合は、遺言書を残しておく必要があります。
  6. 内縁の妻又は夫がいる場合
    長年夫婦として連れ添ってきても婚姻届けを出していない場合には、内縁の夫婦となり妻(夫)に相続権はありません。内縁の妻(夫)に財産を残してたい場合には、遺言書を残しておく必要があります。
  7. 行方不明の推定相続人がいる場合
    所在が不明で連絡が取れない相続人がいると、遺産分割協議ができません。
    場合によっては、遺産としての預貯金が一切引き出しできない事態にもなり得ます。
    遺言書を書いておけば遺産分割協議が必要なく、遺言執行者によって預貯金の引き出しもスムーズにできます。
    このような場合には、遺言書を残しておく必要があります。
  8. 先妻と後妻の両方に子供がいる場合
    先妻の子と後妻との間では、お互いに遺産の取り分を主張するという紛争がよく起こります。
    このような場合は、遺言書を残しておく必要があります。また、認知したい子供がいる場合も同様です。

遺言の種類

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
遺言者はいずれかの形式を選択することになりますが、法律的に有効な遺言を作成し、確実な実行を望む場合、公正証書遺言をお薦めします。 

  1. 自筆証書遺言
    遺言者が自ら全文、日付、氏名を自署し、印を押して作成した遺言書を指します。
    遺言者が一人で作成できるので、最も簡単で、費用もかからず、取り組みやすいのですが、安全性・確実性は公正証書遺言に劣ります。
    遺言者の死後に、遺言書が偽造・変造・隠匿されたり、遺言書に瑕疵があったりといった場合には、遺言書の有効性が問題視され訴訟に発展しかねません。 
  2. 公正証書遺言
    2名以上の証人(推定相続人、未成年者などは証人になれません)の立会いのもとで、公証人に作成してもらう遺言です。身体が不自由などの理由で公証役場まで出向けないときは公証人に自宅や病院に来てもらうこともできます。
    【メリット】
    公正証書遺言の原本は、作成した公証人役場に保管されるので、偽造・変造・隠蔽のおそれがなく安全で法的根拠が高い点です。
    【デメリット】
    証人が立ち会うため遺言の存在が分かってしまい、秘密は保持されにくいという点があります。
    また、作成には財産の価額に応じ公証人手数料がかかります。
    なお、公正証書遺言以外の遺言は、遺言者の相続発生後、家庭裁判所での検認が必要にります。
  3. 秘密証書遺言
    遺言者本人または代筆者が作成して封印し、公証人に遺言者本人のものであることを確認してもらう遺言書です。
    遺言者の署名・押印があれば、遺言者の自書でなくても構いません。
    公証人は遺言書の存在を証明してくれますが内容には関与しません。
    また、公証役場で遺言書は保管されないので、ご自身で管理します。

自筆証書遺言の様式緩和(2019年1月13日以降)
2019年1月13日以降、自筆証書遺言の財産目録部分に限り、パソコン等での作成が認められるようになりました。
これまで、遺言者が手書きで作成することを求められていた財産目録を、パソコン等で作成できるのは作成者の負担を大幅に軽減します。
  • 通帳のコピーなどを財産目録として添付することも認められます。
  • 財産目録の全ページに署名・押印する必要があります。
法務省資料 自筆証書遺言に関する見直し(PDF)
自筆証書遺言預かり制度(2020年7月10日以降)
自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができます。
遺言者の死亡後に、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べること、遺言書の写しの交付を請求することができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。
法務省資料 相続に関するルールが大きく変わります(PDF)5ページ参照